「フリーランス」と「個人事業主」、なんとなく同じような意味で使っていませんか?
正直、この2つの言葉をあまり区別せずに使っています。でも、実はこの2つ、指しているものが違うらしいのです。
この記事では、「フリーランス」「個人事業主」「自営業」「法人」という似たような言葉の違いを、税務上の区分という観点から整理します。
この違いを知っておくと、確定申告のときや、この後紹介する「フリーランス新法」のような制度が自分に関係あるかどうかを判断するときにも役立ちます。
「フリーランス」は働き方の呼び方
「フリーランス」は、特定の企業に所属せず、案件ごとに契約を結んで仕事をする、という働き方そのものを指す言葉です。
デザイナー、ライター、エンジニアなど、専門的なスキルを活かして働く人によく使われます。
ポイントは、フリーランスという言葉自体には、税法上・法律上の正式な区分という意味がないことです。
あくまで「働き方のスタイル」を表す、社会的な呼び方だと考えると整理しやすいと思います。
「個人事業主」は税務上の区分
一方、「個人事業主」は税法上の正式な区分です。
法人化せず、個人として反復・継続的に事業を行っている人を指します。
個人事業主になるためには、原則として開業から1ヶ月以内に、税務署に「開業届」を提出する必要があります(提出が遅れても罰則はありませんが、後述する青色申告に関わってきます)。
さらに、青色申告を利用するには、開業届とは別に「青色申告承認申請書」という書類の提出が必要です。
つまり、青色申告をするには「開業届」と「青色申告承認申請書」の2つの書類が必要で、開業届を提出していない場合は、そもそも青色申告承認申請書を出す前提が整わず、白色申告になります。
青色申告承認申請書には提出期限がある
青色申告承認申請書には、次のような提出期限があります。
- すでに開業している場合:その年の3月15日まで(この期限に間に合わないと、その年は白色申告になります)
- 1月16日以降に新しく開業した場合:開業日から2ヶ月以内
期限を過ぎてしまうと、その年分は青色申告を選べなくなってしまうので、開業届と合わせて、早めに提出しておくと安心です。
- 開業届と青色申告承認申請書、両方を提出している場合:青色申告が選べる(最大65万円の特別控除、赤字の3年間繰越などのメリットがあります)
- 開業届を提出していない場合:白色申告になり、青色申告の特典は受けられません
つまり、同じように「フリーランスとして働いている」人でも、開業届を出して個人事業主になっている人と、そうでない人がいる、ということになります。
「自営業」「法人」との関係も整理すると
- 自営業:雇われずに自分で事業を営んでいる人を指す、社会的な総称です。個人事業主も、後述する法人の経営者も、どちらも含む、いちばん広い言葉だと考えてください。
- 法人:法人設立の手続きを行い、法律上の人格(権利・義務の主体)として認められた組織です。個人事業主とは異なり、「組織の形態」を表す言葉であり、働き方を表す言葉ではありません。
整理すると、次のような関係になります。
| 呼称 | 位置付け |
|---|---|
| フリーランス | 働き方のスタイル(税法上の区分ではない) |
| 個人事業主 | 税法上の区分(開業届を出した個人) |
| 自営業 | 個人事業主・法人経営者を含む、社会的な総称 |
| 法人 | 法律上の人格を持つ組織の形態 |
フリーランス=個人事業主、とは限らない
ここまで見てきた通り、「フリーランス」と「個人事業主」は、重なる部分は多いものの、イコールではありません。
- 案件ベースで働くフリーランスが、開業届を出して個人事業主になっているケース(もっとも多いパターンだと思います)
- フリーランスとして働いていた人が、途中で法人化(法人成り)した場合、その人はもう個人事業主ではなく「法人の経営者」です。
それでも「フリーランスのエンジニア」のように、働き方としては引き続き「フリーランス」と呼ばれることがあります - 会社員が副業でクラウドソーシングの仕事を受けている場合、その規模や継続性によっては、個人事業主としての開業届を出していない(=事業所得ではなく雑所得として扱われる)こともあります
つまり、「フリーランスかどうか」は働き方の呼び方の問題であり、「個人事業主かどうか」は税務署への届け出と申告方法の問題、という、レイヤーの違う話だということです。
もう一つ紛らわしい「インボイス制度」との関係
ここまでの話とは別の軸で、「インボイス制度(適格請求書発行事業者の登録)」も、よく混同されがちな制度です。
インボイス制度への登録は、開業届の提出とは別の手続きです。
実は、開業届を出していなくても、インボイス制度への登録自体は可能とされています。
開業届の提出の有無と、消費税の扱い(インボイス登録)には、直接の関連はありません。
ただし、開業届は本来、開業から1ヶ月以内に提出することが求められている書類なので、インボイス登録の申請書と、開業届を同時に税務署へ提出して、手続きをまとめて済ませるケースも多いようです。
インボイス制度に登録すると、売上規模にかかわらず「課税事業者」として扱われ、消費税の申告・納税義務が発生します。
逆に登録していない場合、取引先(発注者側)は、原則としてその取引について消費税の仕入税額控除を受けられなくなるため、契約条件の見直しを打診されるケースもあります。
つまり、「フリーランスかどうか」「個人事業主かどうか」「青色申告か白色申告か」「インボイス登録事業者かどうか」は、それぞれ別の軸の話です。
同じ「フリーランス」という働き方をしていても、この4つの組み合わせによって、実際の手続きや税負担はかなり変わってきます。
なぜこの違いを知っておいた方がいいのか
普段の生活では、正直、あまり厳密に区別しなくても困らない場面が多いと思います。ただ、次のような場面では、この違いが実際に関わってきます。
フリーランス新法との関係
2024年11月に施行された「フリーランス新法」は、法律上「特定受託事業者」という言葉を使っています。
これは、個人で従業員を使わずに事業を行う人(個人事業主)や、一人だけの法人(役員が1人だけで従業員がいない法人)を指しており、「フリーランス」という言葉そのものよりも範囲が明確に定義されています。
この記事で紹介した「個人事業主」の考え方が、そのままつながってきます。
確定申告のとき
開業届を出して個人事業主になっているかどうかで、青色申告が使えるかどうかが変わります。
「なんとなくフリーランスとして働いている」だけでは、税務上の扱いが自動的に決まるわけではない、という点は覚えておいて損はありません。
資金調達サービスを利用するとき
ファクタリングなどの資金調達サービスに申し込む際には、多くの場合、確定申告書や開業届などの書類が求められます。
「自分はフリーランスだから」ではなく、「個人事業主として、こういう書類を提出できるかどうか」という基準で見られることが多いです。
審査に通らなかった場合の理由や対処法は、「ファクタリングの審査に通らない理由と対処法」で整理しています。
報酬を受け取るとき(源泉徴収)
デザイン料や原稿料、講演料などの一部の報酬は、支払う側が所得税を差し引いてから支払う「源泉徴収」の対象になります。
デザイナーの場合、グラフィックデザインやパッケージデザインなどの報酬は源泉徴収の対象になりますが、コーディングやシステム開発など、デザイン以外の業務は対象外です(1つの請求書に両方が混在する場合は、デザイン部分だけ源泉徴収の対象にするのが一般的です)。
また、支払う相手が個人(フリーランス・個人事業主)か法人かによっても扱いが変わり、法人への支払いは、この源泉徴収の対象にはなりません。
「自分の報酬に源泉徴収が必要かどうか」は、フリーランスか個人事業主かという区分ではなく、業務の種類や相手が個人か法人かによって決まる、という点は覚えておくとよいと思います。
正直なところ、私自身、源泉徴収のルールを完璧に理解できているわけではありません。実際には、源泉徴収票を発行してくれる取引先の方が少ない、というのが実感です。だからこそ、確定申告は税理士さんにお任せしています。
制度を100%理解していないと不安になるかもしれませんが、細かいルールまで自分ですべて把握しようとしなくても、必要に応じて税理士さんなどの専門家を頼るのも、現実的な選択肢の一つだと思います。
社会保険への加入
個人事業主が加入する公的な健康保険・年金は、原則として会社員とは異なり、国民健康保険・国民年金になります(従業員を5人以上、継続して雇っている一部の業種では、社会保険の加入が義務になるケースもあります)。
一方、法人化(法人成り)すると、たとえ従業員がおらず自分1人だけの会社であっても、健康保険・厚生年金への加入が原則義務になります。
「フリーランスとして働く」という点は変わらなくても、個人事業主のままでいるか法人化するかによって、社会保険の扱いが大きく変わる、という点も知っておくと安心です。
社会保険とは、病気やケガ、高齢、介護、失業、労働災害といった生活の大きなリスクに備えるため、国が運営する公的な保険制度の総称です。
広い意味での社会保険は、次の5つの制度で成り立っています。労災保険、健康保険(医療保険)、厚生年金保険、介護保険、雇用保険。
国民健康保険との違い
会社員などが加入する「社会保険(健康保険など)」と、自営業者などが加入する「国民健康保険」には、次のような違いがあります。
加入対象:社会保険は主に会社員や公務員、一定の条件を満たす短時間労働者です。国民健康保険はそれ以外の一般住民です。
保険料の負担:社会保険は、保険料を会社(事業主)と労働者で半分ずつ(折半)負担します(労災保険は全額会社負担)。国民健康保険は、加入者が全額を自分で支払います。
まとめ
「フリーランス」は働き方の呼び方、「個人事業主」は税務上の区分、というのが、いちばんシンプルな整理の仕方です。
似ているようで違うこの2つの言葉を区別しておくと、確定申告や制度の対象範囲を確認するときに迷いにくくなります。
もし、取引先からの入金が遅れて困っている場合は、「フリーランス新法とは?支払期日に払われないときの対処法」もあわせてご覧ください。
この記事で整理した「個人事業主」の考え方が、そのまま関わってきます。
また、資金繰りの選択肢としてファクタリングを検討している場合は、「フリーランスのファクタリングおすすめ5社比較|手数料と口座の注意点」もあわせてご覧くださいね。
言葉の意味を正しく知っておくと、自分に関係のある制度やサービスを見つけやすくなります。難しく考えすぎず、少しずつ整理していきましょう。
このブログ「フリメモ」では、フリーランスの資金繰りに関する情報を、実体験を交えながら発信しています。同じ状況にいる方の、次の一歩の参考になればうれしいです。